フリーランスエンジニアの実態と未来

フリーランスの実態を語る際に、正社員と比較して語られることがありますが、開発現場にいる者やその関係者から見ると滑稽に映っているかもしません。何故なら、一部を除き両者の違いはないからです。
一部とは、一次請け会社や自社でサービスを展開してる企業を指します。ここではその一部以外会社と準委任契約を交わして働くフリーランサーについて、その実態をお伝えします。

ちなみに、私自身は正社員もフリーランスも経験しています。

準委任契約と請負契約の違い

フリーランサーが企業と業務委託契約を交わす場合、2つの契約方法があります。ここで扱うのは、準委任契約です。

準委任契約
経歴とスキルを提示して、時間を切り売りする契約です。一定期間内は、月140~180時間働いて、その時給は3,000円。このような労働契約です。多く働けばその分割増で支払われます。一般的に客先常駐になります。
請負契約
成果物を納める契約です。完成して納品させなければ報酬を受け取れませんが、契約内容によります。

エージェント経由して仕事を受けた場合、準委任契約となり、クラウドソーシングを利用した場合、多くが請負契約になります。

正社員と比較して分かるフリーランスの実態

フリーランスとなり、会社と準委託契約を結んだ場合、正社員と何が違うのでしょうか。開発現場目線で、あまり語られていない事をまとめました。

フリーランスの年収は、正社員と比較して数百万円増

フリーランスになると、凡そ100万~数百万円の増加になります。
未経験からIT会社に入り業務系で2年も経験すると年収400万円程です。その人が独立すると700万円になります。700万円の根拠は、正社員時代の経歴やスキルに依存しますが、平均的に月60万円になるためです。これで300万円増になりました。

しかし、この300万円増の中には、正社員の額面の他に会社負担分が含まれます。会社負担分で主なものは健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料です。正社員の年収が400万円の人は、会社負担分を300万円から差し引いても十分増えています。

ところが、正社員年収が600万円になると話が変わります。月の額面50万円とするとの会社負担分は、90万円です。年度や月の給与内容によって変化しますが、月の額面の約15%が会社負担分になるためです。正社員年収が600万円の人は、実際には690万円を受け取っている勘定になります。

増加金額はそれまでの経歴とスキルに大きく依存します。需給バランスで決まりますが、前職のプロジェクトの規模とその中での役割・給与額、得意分野(機械学習、業務系、金融系、WEB系、組み込み系、研究開発)にも大きく左右されます。相場はあってないようなものです。
もし独立後の金額が知りたいのなら、フリーランスに仕事を斡旋するエージェントに相談するのが早いです。

仕事を選べるとは限らないフリーランス

正社員と比較すると選べます。しかし、あくまでも比較した場合です。

枯れたアーキテクトを採用した業務系の保守作業があります。業務系はコスト削減が目的であるため、古い技術で作られたものを改修して使い続けているケースを見かけます。そして、これらはあなたがフリーランスに転向した後、無価値に思われかねないのです。正社員の場合、拒否できません。

一方フリーランスは、選びやすくなります。提示された案件を受けず他をあたっても構いません。但し、短期的なお付き合いの場合です。その時、お付き合いが長い場合、その会社とのお付き合いが一切なくなる可能性が生じます。振っておいて、また付き合って下さいは虫が良すぎです。また、断り方が良くないと、業界内ネットワーク網により振る舞いが知れ渡ってしまいます。

仕事は選び易いですが、条件が付くのです。あくまでも、正社員と比較して選びやすいに過ぎません。

フリーランスはクビになり易いとは限らない

会社が業績不振になり、契約解除やクビになりやすいのは、フリーランスを含む外注先、派遣、契約社員、正社員の順になります。
しかし、これはIT業界には当てはまりません。会社に利益をもたらす人が残されますが、他の業界よりも能力差が激しいと見なされているからです。どのような立場であろうが、多大な利益をもたらす者は手放しません。

フリーランサーの技術力が高いとは限らない

出会ってきたフリーランサーを見る限り、正社員と違いはありません。フリーランサーと出会って技術力の高さに驚かされるのは、正社員が社外の知識に触れるためです。大半がそこそこの方です。
確かに高い人もいましたが、技術向上に専念する人です。そして、そのような人は必ず企業から好待遇の契約社員や正社員の誘いがきます。

また、正社員はマネージメントに特化するため、技術は広く浅くになります。しかし、これは元請け会社に限った話です。二次請け以下になると、マネージメントは自社内メンバーに限るため、求められません。滞りなく進める開発現場の能力・知識が求められます。その中に、技術が含まれます。

よって、フリーランサーが正社員と比べ、高い技術力があるとは限らないのです。そこそこだからフリーランサーにはなれないと考えるのは誤りです。

フリーランスは長時間労働を強いられる

残念ながら真実です。労働基準法が適用されないため、作業を振り放題です。むしろそれが目的でフリーランスを活用する会社もあります。
また、正社員では対処困難な案件があり、その解決のためにフリーランスに依頼することがあります。課題を直ぐにクリアできなければ長時間労働になりますが、短時間で終わればあなたの評価はあがります。

フリーランスは社会的な地位が低い

これも事実です。
クレジットカードが作れない、住宅ローンが下りない、といった取るに足りない事ではなく、責任の範囲が限られているため、法人との請負契約が結び難い現実があります。納品物に瑕疵があった場合、個人では事実上責任が取れません。発注主は、契約の締結に二の足を踏むでしょう。

正社員のデメリット

正社員だから収入が安定する事はありません。所属先によっては、将来絶望が待っている恐れすらあります。

  • 枯れたアーキテクトを得意としている
  • 社員数が10人に満たない
  • 社員同士の交流がない

このような会社は、人が集まらない上に逃げていきます。
転職市場に流れている優秀な人材は新しもの好きですので、古い技術に縛られていると人が集まりません。少人数体制のままです。人数が少ないと、退職者や病人が出た時のカバーがきつくなります。転職しない限り職場を変えられません。そして、社員間の交流がないためあっさりと関係を断ってしまいます。そのため、先細りです。

正社員に価値を感じられるのは、一次請けができる会社です。案件が数多く抱えているため、

  • 望む仕事を選べる
  • 人が集まりやすい
  • 多人数による人的交流が盛んで、情報量が多い
  • 箔が付く

このような会社であるなら正社員のデメリットは少ないでしょう。

フリーランスエンジニアの将来は、業界未経験者の想像を超えている

長い間、準委任契約を結ぶフリーランサーは多くはありません。IT業界のフリーランサーの割合は全体5~19%と言われています。受取金額が多く案件も豊富であるため、収入は安定しており先に挙げたデメリットは些細なものです。
それでも、割合が少ないのには理由があります。

フリーランスの割合が業界全体の5~19%の理由

信頼のおけるデータは存在しませんが、5~19%と考えれています。数字の根拠は、斡旋業者が独自に集計したものや、行政が依頼した調査を元にしています。
この数字は私の実体験と大変近いものがあります。実際に開発現場に出向くと、1割程がフリーランスでした。もちろん、外向けには社員と名乗るため、実態はわかりません。フリーと名乗る人だけで見ると、肌感覚と一致します。

この少なさは前にも触れていますが、フリーランスが仮の姿だからです。常駐先から契約社員や正社員として誘われて、そのままいついてしまう人が多いのです。
そうしない人もいます。多いのは法人化を目論んでいる人です。親密になった者と起業を目指しているのです。節税メリットの享受だけではなく、売上を伸ばしたいがためです。個人では請負先が限らてきますが、法人格になれば幅が広がります。断然利益も伸びます。
このような誘いや法人化がフリーランスの少なさの理由なのです。

未経験からフリーランスエンジニアになるためには

社員として2年以上の実績がないと難しいのが現実です。派遣社員ならば、未経験でも働けます。その後に独立するのが、無難な方法です。

しかし、直ぐにフリーランスとして働ける方法がないわけではありません。クラウドソーシングを利用し請負契約を格安で受注し、実績を作ったのち、出来るだけ早い段階で知名度の高い企業と格安で契約を交わします。0円でも構いません。その実績を基に営業活動をすれば、容易にフリーランサーとして活躍が続けらます。

ブラックな方法で決して褒められた方法ではありません。ですが、使わざるを得ないのが現実です。実際、ほぼ決まった案件を無償提案した個人に奪われた知人を目にしています。

実績が少なければ、エージェントの活用が効果的

実績が少ない者が、準委任契約で仕事を請け負いたい場合、エージェントに依頼するのが最も確実です。何故なら案件が見つかりやすいからです。
エージェントは案件を抱えていますが、自社の人材ポートフォリオだけでは、案件を受けられません。そこで業界内の他のエージェントをあたります。そのため、人材リストが業界内で回っているのです。ちなみに個人を特定できるものではありません。そのリストがある御蔭で他社が抱えている案件を受注することが可能になるのです。
しかも、金額交渉はエージェントが全て行ってくれます。使わない手はないでしょう。

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