ITエンジニアが英語力を上げると年収2倍

なぜ、年収が2倍になるのか。求められているからです。
開発現場では、いやおうなく英語を要する場面は多々あります。それも日常的にです。マニュアルが英文、クライアントや協力会社に外国人が多数占めているということもあります。

 しかし、この必要性を肯定的に捉えると、英語力の向上は開発力の向上を意味ます。特に、日本国内では、外国語が不得意な者が多数を占めているため、開発現場での英語のスキルアップが、そのまま人材価値を高めます。

 では、どのくらいスキルアップすれば、どのくらいの年収が見込めるのでしょうか。
20代30代まで世代向けに、経済産業省の報告書とリクナビNEXTのデータをもとに、多くの開発現場を見てきた私の視点で考えてみました。

英語力が必要になる5つの場面

 頻度の差はありますが、自社開発でもクライアント案件でも、必要な場面に遭遇してしまうことはあります。そうなると慣れない文章や会話でヘトヘトにさせられます。ここでは、頻度の高いものを挙げておきます。

説明文が英文

 WEB関連の開発において、WEBサーバが使いますが、このサービス(見えたところで常時動いてユーザーに機能を提供するプログラム)を提供しているのOSはLinuxです。Linuxに関わる文章は、英語です。サービスやアプリケーションの設定方法や使い方、ライブラリ(プログラムの集まり)の使い方等々で、必要に迫られます。
Linux環境でなくても、WindowsアプリケーションやWEBサービスを登録するWEBサイトが英語だけということも、しばしばあります。どのようなプラットフォームを選択しようが、どこかで遭遇します。

日本で公開していない問題は、海外のサイトで解決する

 開発段階で問題があると、解決の助けに国内の情報網ではなく海外に活路を求めることが、しばしばあります。海外の方が数年先を進んでいて、情報量が多いためです。多い理由は、フリーの環境やサービス、特にオープンソースを取り入れ、その提供方法が英語で行われるので、必然的に利用人口が多くなるからです。
そのため、日本語でWEB検索しても解決せず、最初から英文で海外に求めている人も見ています。

外国人との会話

 職場が日本でも、エンジニアとのコミュニケーションは、英語が使われます。
日本語で話せる外国人もいます。しかし、割合から見ると、圧倒的に片言の日本語が多いのが現状です。しかも、作業に関する言葉は通じません。情報伝達においてエラーの発生の恐れがあります。そのため、彼らが理解できる英語が役立つのです。

外国人のソースコードのコメント

 外国人がエディットしたソースコードのコメントは、日本国内で編集したとしても英文です。何故なら、OSが日本語に設定されているため、日本語を打ちなれない彼らは、そのような選択せざるを得ないからです。不自由なく日本語で会話できる外国人でさえそうしています。

海外からテクノロジーの最新情報を収集

 最新テクノロジーは、主に開発開始前に必要となります。
WEBサイト、SNS、YouTubeを通じての情報収集において、日本ではなく、数年先を進んでいる海外に求める機会が増えました。年で遅れている日本の情報よりも、海外を見て技術選定した方が成功確率を上げるからです。

苦手な英語を解決する手段と問題点

 前出の問題点は、機械学習の進んだ昨今では、WEBサービスやアプリで切り抜けられる可能性があります。

  • 文章なら、WEBサービスで和訳
  • 英語での会話なら、スマホアプリ

 しかし、こうした解決方法は望まれません。語学堪能な賢者に頼るのもNGです。何故ならコスト高だからです。

 TOEIC990点の賢者なら、瞬間的に教えてくれます。というか、教えてくれました! 外国人エンジニとの会話なら、大抵通訳がいます。ほんと、お世話になりました!
 しかし、こんなことをしていると、プロジェクトを管理する立場の者から、割高な人と見られかねません。語学が得意な人は給与が高く、その人の生産性を落としているからです。

 また、先ほどの、WEBサービスやスマホアプリの利用も、開発現場では歓迎されないのも事実です。ワンテンポ遅れるからです。瞬間的に返事をくれる人と、数十秒も遅れて返事が返ってくる人、どちらと仕事をしたいでしょうか。
そもそもWEBサービスやスマホアプリの使用は、コンプライアンス違反の疑いが生じてしまいます。軽々に利用できません。

 WEBサービスやスマホアプリである程度切り抜けられますが、残念ながら、現実的な方法ではありません。そのため、英語スキルが必要になります。
では何をすればよいのでしょうか。

ITエンジニアとの会話は、よく使われるフレーズさえ押さえておけば問題なし

 英語のレベルはどのくらい求められるのでしょうか。普通よりちょっと上だけで十分です。求人票のTOEICの点数を見れば一目瞭然です。

 TOEIC990点は、誰からも求められません。その証拠にリクナビネクストの求人票を覗くと、求められているレベルは600点からが大多数です。600点は、受験者の平均をほんの少し上回るレベルです。普通のレベルです。700点、800点を求めている企業もありますが、それはあくまでも対外的な交渉に携わると予想される、もしくは専門性が極めて高い分野の求人です。外資系企業でも、730点とそれほど高くはありません。
ITエンジニアが求められているのは、あくまでもテクロジー系の知見が主であり、英語は普通レベルで十分条件と考えられます。

 実際、外国人とやり取りをしていると、そのうち慣れます。相手も難しい言葉や凝った言い回しを使いません。母国語が英語ではないことが多いからです。話し相手も、理解しやすいように気を配ってくれます。

 また、ITエンジニアとして覚えなければならないことは、限られています。
工程 / 工数 / 期限 / 進捗 / 設計 / テスト / 運用 / 保守 / etc…
単語だけではなく言い回しを覚える必要がありますが、これも多くはありません。

開発現場において求められる英文読解力は限られた範囲のみ

 会話と同様、難しくありません。ITエンジニアが開発で出くわす用語は、世界共通だからです。英文をそのまま読むように習慣づければ、どこかで見たような用語ばかりなのに気付く筈です。また、エンジニア向けの文章は、難しい文法は使われていません。

何故、英語力を上げると年収が2倍になるのか

国内企業でワンランク上と評価され、外資企業の道も開け、年収高い米国企業に勤められるからです。
経済産業省「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果 H29年8月21日」とDODAの調べを基にしています。

日本企業では、英語力で1.26倍

 日本企業の給与決定で重視されているのは、ITスキル、コミュニケーション能力、成果です。ITスキルとは、設計力、開発力、スピードなどを差し、先述の通り英語が全ての場面で関わってきます。コミュニケーション能力とは、マネジメント能力を含み、これも英語が関わってきます。

 下図は、給与決定に重要な項目に「順位」として企業が回答した結果です。どれだけ、ITスキル、コミュニケーション能力を重要視しているかが分かります。

 そして、どれだけ上がるかも、経済産業省のデータで見当がつきます。下図を見ると、英語ができると指導できるチームリーダーに匹敵するため、レベル4に該当します。すると、レベル3から1.26倍に給与が上がる事が分かります。

 また、これを裏付けるものとして、DODAの調べ(2013年12月)を参考にしました。図を見ると、TOEICスコア600点台の給与額は、スコアなしと比べ1.19倍と、やはり2割増です。

DODAの調べ

DODA

米国のITエンジニアの給与は、日本の2倍

 日米間に開発体制に違いがありますが、同等の作業とみなしてみると、20代30代共に米国は日本の倍以上の水準です。20代では日本の平均値が、413万円に対して、米国は1023万円です。30代でも同様に米国は日本の倍です。

日米のIT人材の年代別の年収分布

経済産業省「IT人材に関する各国比較調査」(平成28年6月)

 日米に倍の開きが生じている理由は米国にあります。米国は、

  • IT先進国
  • IT産業に対して投資マネーが入りやすい土壌
  • 従事者は大学でコンピュータサイエンスを学んだツワモノで、金を生みやすい

だからです。必然的に給与に反映されやすくなります。世界的に見ても米国のITエンジニアの給与水準は突出していて、2位の国と大きな差があります。その2位の国は、日本です。

 私の周辺では、英語学習は盛んに行われ、社内での研修制度を積極的に活用していました。
 また、4か国語で会話できる人、TOEIC990点の人さえいました。しかし、高い水準の人は極稀です。ほとんどの人が英語に抵抗感がない止まりの、普通の人です。それでも事が足ります。
 今、日本国内で英語スキルを身に着ければ、将来、必ず収入に有利に働きます。
 周りよりも2割増し程度で良いのなら、求められているレベルは、普通より少し上です。
 今直ぐに学習しない理由はどこにもありません。

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